【創作】信じるものは救われろ。【第二話/新しい家族】#1
「よかったわねぇ聖くん、晶ちゃん」
どうしてこうなった…?
笑顔の晶を背中に張り付けた兄…ジト目の聖の目の前には自分の事のように笑顔を浮かべる施設の施設長…
そして
「かならず幸せに致しますわ」
出会ったころとは違いスーツを華麗に着こなしたアメノウズメがそこには居た。
それも人の好さそうな笑顔を張り付けて。
「ええ、よろしくおねがいしますわ」
「勿論ですわ」
そう、聖を。
そしてその弟を里親として引き取る者として現れた。
本来里親になるには色々段階を踏まなければいけないはずだが、と思案している聖をしり目にアメノウズメは施設長との話をどんどん進めていった。
そして、施設での聖、晶の部屋。
晶は施設の友人に別れを告げてくるように伝え、部屋でアメノウズメと二人きりになるように聖は仕向けた。
「……一体どういうおつもりで?というか、どういうことですか」
「ふう、洋服…特にこのすーつとやらは窮屈であるな」
「質問に答えてください。そもそも人間に干渉しない、できないと言っていた筈ですが」
施設長と話した際、アメノウズメ扮する里親とは何度か面会をしたという事になっており、それにも聖は首を傾げていた。
「人としての肉体を特別に作って頂きその肉体を依代に人に混じる事で干渉できるようにしておる。他の神格の知る所になってしまえば何かと面倒故大々的には干渉できんがな」
「天照様の判断ですか」
「ああ。この間言った通り黄泉国の者が暗躍してるでな。あちらも人間に干渉している故多少は目をつぶって頂けるであろうとな。…それに、ぬしの存在がむこうがたに知れている。ぬしを守る為でもあるな」
「…施設長の事は…」
「少々偽の記憶を植え付けさせてもらった。円滑に事を運びたかった故な。…言っておくが拒否権はないぞ。ぬしとぬしの弟の身を守るためだ」
「ええ、拒否は致しません。むしろ神々の法を捻じ曲げてまでありがとうございます、と言えばいいのでしょうか」
「皮肉たっぷりじゃのう。ま、よきかなよきかな。これからは家族じゃ。よろしく頼むぞ」
「はい」
「さて、ぬしらの荷物を準備するかのう」
何処か納得いかない顔をしながら荷物の準備をはじめ、夕方には準備をしてタクシーで新居に旅立つこととなった。
ついた先は神社のような、というか神社であった。
しかし聖は首をひねる。
「…こんな所に神社なんてあったかな…」
「最近建立されたんですよ」
「そう、だったんですか」
タクシー運転手の話に聖はさらに首をひねった。
すると隣にすわるアメノウズメが小声で耳打ちをした。
「ぬしと同じ転生者の者が協力してくれてのう。アマテラス様とアメノウズメを奉る神社を急遽建立してくれたのだ」
と話した。
後ろでそんな話をしているとは知らず晶は助手席からの景色にただただはしゃいでいた。
「おかえりなさいませ、アメノウズメ様」
「うむ、帰った」
「やぁ、君たちがアメノウズメ様が見つけたという転生者だね」
「てんせーしゃ??」
「あ、弟は違います。…僕は神原聖。厩戸皇子の転生者です」
「そうだったか、失敬失敬。私は永見貞愛(ながみさだちか)の転生者・永見愛結(ながみまなむ)だ。よろしく。ここの神主だ。まなむおじさんと呼んでくれ」
「まなむおいたん!」
「ははは。さ、今日は疲れただろう。部屋を準備したから今日はゆっくり休むといい」
「ありがとうございます」
こうして聖と晶は愛結に導かれて神社の奥にある居住用の建物へ向かった。