【創作】信じるものは救われろ。【第三話/それは確かに愛でした】#1
永見家…後に紹介されたが「天輝神社(あまてるじんじゃ)」に世話になり始め数日。
愛結が晶の送り迎えの手伝いをしてくれるのもあって聖は両親が亡くなる前の生活を取り戻した。
昔ほどではないにしても笑顔も戻ってきていた。
そんな様子を見て誰よりも喜んでくれた少女がいた。
【相賀利子(そがとしこ)】
聖の幼馴染の少女だった。
前世の記憶が戻る前から聖にとって何処か心が安心する存在の少女だった。
「聖、元気になったね」
「そうかな。…新しい家族がみんないい人だからかもしれない」
「ふふ、それなら良かった。聖が元気ないと私まで落ち込んじゃうもの」
聖は記憶をとりもどそたときにこの安心感の正体を知った。
幼馴染というだけではなく、彼女は前世の妻の生まれ変わりだった。
笑った顔が前世の妻・刀自古郎目(とじこのいらつめ)の花のような笑顔を思い出させる。
勿論今の彼女の事も愛おしいと感じていた。
その感情を想うと聖は「小学生のくせに」と自分で照れてしまう。
「ねぇ、久しぶりにあそこにいかない?」
「ああ、それはいいね」
彼女が誘ってくれた場所は古びた石碑がある小高い丘。
景色がいいのに人が少ない絶好の場所だった。
「綺麗な夕陽だね」
「でしょう?久しぶりに聖と見たかったの」
「…心配かけてばっかりでごめんね」
「ううん、でもまた一緒にここに来てくれる?」
「うん、利子がそれで喜んでくれるなら」
「やった!」
夕陽の中で交わされる約束。
両親が死んでからずっと緊張していた聖の胸はとても温かくなった。
「さ、そろそろ陽が沈む。帰ろうよ」
「そうね」
「送るね」
「ありがとう」
二人で並んで丘を降りる。
その途中で陽が沈み切り暗闇に包まれる。
その闇に紛れて聖は気が付かなかった。
利子の肩に黒い手が乗せられていることを。