双葉たぐるのその日暮らし。

ゲームのプレイ日記とかTRPGの事とか日常とか。楽しみながら生きていきたいよね。

【創作】信じるものは救われろ。【大人と子供の狭間】#1


ひそひそ…ひそひそ…


「ねぇ、最近聖くん違くない?」
「なんか俺たちともつるまなくなったって言うかさ」
「しーっ!聖くん、この前の火事で……」

とある場所のとある小学校。
その教室の1つでとある少年を巡っての噂話がひそひそ、こそこそと休み時間の度に囁かれていた。

【神原聖(かんばらひじり)は変わってしまった】と。



噂の中心人物である少年ーー
神原聖はこのクラスの普通の少年だ。
誰にでも優しく、頭もよく。
でも誰にでも好かれるような、クラスの頼れる人気者。

それが、少し前までの彼のイメージ。

ここ最近の彼は、というと ぼんやりと窓の外をながめ、ずっと何かを考えている。

周りのクラスメイトたちにはそう見える。
何かあったか聞いても、何も聞かせてくれない。

『付き合いがわるくなった』
クラスメイト達は口々にそう言っていた。

『お父さんとお母さんを火事で亡くしたばかりなんだから、元気があるわけが無い』

理解をしているつもりのクラスメイトたちはそう話す。

しかし本当の理由はなにも分からなかった。

「……」

そんな彼らの噂話を背に受けて。
彼は今日も一日普通に授業を受けて、そして友人たちの誘いを蹴って帰っていく。

ーーー

「晶(あきら)」
「お兄ちゃん!!おかえり!!」

そして保育園へ向かい弟を迎えにいく。


「いい子にしてた?晶」
「うん!」
「それはよかった。帰ろっか。…先生、ありがとうございました」
「お兄ちゃんいつもお迎えお疲れ様。あきらくん、お兄ちゃんと気をつけて帰ってね」
「はーい!」

夕方、火事の後暮らし始めた施設へ帰るため弟の手を引いて夕焼けの中を歩く。
その目はやはりなにかを考えているようだった。

「お兄ちゃん、だいじょーぶ?」
「ん?どうした?」
「げんきないこと、多い気がして」
「大丈夫だよ!ちょっとお腹空いただけ」
「なーんだ!今日カレーライスだといいなぁ!」
「そうだな」

弟に心配をかけまいと指摘されてすぐに笑顔を取り繕う兄。
そう、彼のその取り繕われた笑顔は歳不相応のものだ。

その違和感は周りからの印象を歪めてしまっている。

しかしその違和感の原因こそ彼を悩ませる原因となっていることは彼以外誰も知らない。

彼の悩みとは…