【創作】信じるものは救われろ。【大人と子供の狭間】#2
彼の悩み。
それは火事を境に「前世」の記憶がよみがえった事。
火事の前まで普通の小学生だったのに急にもう一人の自分が脳内に現れたような感覚。
しかしそれは紛れもない自分であって…と、少年はどれが自分かわからなくなってしまい子供らしさを失ってしまった。
しかし今の自分は前世の人間ではなく「神原聖」なのだと言い聞かせてせめて大事な、唯一の肉親の弟にはいつも通りの兄でいようと心掛けていた。
そんな矢先。
いつものように弟の手を引き保育園から施設へと向かう最中。
二人の少年はまたも事件に巻き込まれる。
弟の手を引いていた少年はふと立ち止まる。
「? お兄ちゃんどうしたの?帰らないの?」
「…」
少年の目にはヒトならざるものが映っていた。
手足は細く、腹は膨れ、頭に角を生やした青白い肌の人型のなにか。
松明のようなものを持ち夕暮れの街を徘徊しているようだった。
きょろきょろとなにかを探すような動作をしていた。
どうやら彼の弟の不思議そうな反応を見る限り、弟には見えていないようだった。
自分にだけ見えている、という真実が少年の感じている緊張感を一層高めた。
少年はそれを思わず凝視してしまう。
・・・そしてその視線は人型の何か…餓鬼に気づかれ目が合ってしまう。
『汝 我や見ゆる?』
「…!」
見えないふりをすればよかったのだ。
しかし少年は弟の手を握ったまま後ずさりしてしまう。
それは「肯定」を意味する。
『見ゆめりな』
『むつかし。汝には死にてもらふ』
「なっ…!」
逃げなくては。
少年は更に後ずさりをする。
(僕だけならともかく晶がいる…どうする、どうすれば…)
少年の頭に前世の記憶がふいにフラッシュバックする。
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「戦はしないと言ったばかりに戦争を推奨する兵達に…!」
「なんだと…!」
ーー私が戦をしないと言ったばかりに弟はーー
兄でありながら私は弟を守ってやることができなかった。
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(せめて晶は…晶だけは護らなくちゃ…、どうしたら、どうすれば)
少年は幼い頭を必死に回す。
そんな少年を空から眺める者がいることには気づかずに…。
【続】